「小さい赤ちゃん」を育てるということ

「こらいずたかす」は、「たかぎ発達支援室」という法人が運営する発達支援 事業所という位置づけですが、この「たかぎ発達支援室」では、「専門支援事 業」という業務も実施しています。「専門支援事業」とは、市町村からの委託 を受けて各地の発達支援センターや保健センターに出向き、発達支援や相談業 務などをするものです。現在、鷹栖町を含め8市町から委託をいただき、各地を 回らせていただいています。

この「専門支援事業」で、最近、続けて二組の三つ子ちゃんを診る機会があ りました。一組目は1歳後半のお子さんで、1年前初めて会ったときは、やっと 寝返り・ずり這いができてきた8か月の赤ちゃんだったのですが、元気にチョコ チョコ走り回るようになっていました。もう一組の三つ子ちゃんは別の町の2歳 代の元気な子どもたち。どちらもすくすくと元気に育っていますが、多胎児と いうのはどうしても発達のリスクは避けられません。お母さんの一つのおなか をみんなで分け合うのですから、どうしても一人ひとりは大きくなれません。 なので、ほとんどの子は「小さい赤ちゃん」(低体重出生児)として生まれて くるのです。 早産未熟児のお子さんも含めて、「小さい赤ちゃん」は、無事生まれた後も 長期にわたって成長と発達に不安を抱えながら育っていくことが多いのです。 「小さい赤ちゃん」の多くは出生後すぐにNICU(新生児集中治療室)に入りま す。NICUは生命維持と予後のために欠かせない非常に重要な医療施設であるこ とは間違いないのですが、このNICU環境では24時間の光刺激、単調な機械音、 点滴針の痛み… これらの刺激を受け続けながら、数十日、数か月過ごさなけ ればなりません。この環境が後の子どもの発達に影響を与えるということも指 摘されています。 無事にNICUを出られても次に心配なのは発育のゆっくりさと運動発達の遅 れ。体が小さく初歩も遅くなりがちです。発達健診のたびに要観察になりがち (それを伝えなければならない保健師さんも辛いようです)。

歩けるようになったと思ったら今度は言葉がなかなか出てこないことが心配になり、日常会話ができるようになって一安心と思って幼稚園・保育園に入園した ら、落ち着きがない、集中できないと指摘され、就学期になると読み書きの困難 さが明らかになって…(少し極端な例です 心配しすぎないでくださいね)。満 期産で生まれた赤ちゃんでさえ多かれ少なかれ似たようなリスクはあるので、 「小さい赤ちゃん」を育てる親御さんの心配は計り知れないものと思います。 こらいずにも「小さい赤ちゃん」だったお子さんがいます。それぞれに発達の 課題や心配はありますが、どの子もその子らしく、そしてみんな大きく育っていま す。

こらいずでは子どもの育ちを支えられる支援をしていきたいと思っています。
保護者さまも子どもの育ちに不安を感じたら、気軽に相談してください。夜でも 休日でも welcomeです。

こらいずに展示している何点かの絵画、作者は私の 義理の父・母なのです。普段は札幌で子どもから大人までを対象に絵画教室を 経営していますが、実は独立展という会派の会員とのことで、全道展の審査な んかもしているそうです。自宅のアトリエでは、毎年、背丈を超える100号も の絵を描いています。芸術センスのない私でもキャンバスの大きさには圧倒さ れます。昨日、約2年ぶりに義父母宅に訪問し、二人の 元気そうな様子に安堵しつつ、ちゃっかり新しい 絵をい譲ってもらいました。こらいずの絵も週末に でもいくつか入れ替えようかなと思います。

関心のある方は、下記のHPを検索してください。

<検索キーワード> 「木村富秋絵画教室」 「独立展」

今回の便りは、羽幌町の専門支援のために前泊している「とままえ温泉ふわっ と」にて作家気取りで作っています。もちろんパソコンの隣にはグラスが居座り 笑。オロロンラインには個性的な温泉が多くあります。苫前と羽幌の温泉は しょっぱく、天塩温泉はアンモニア臭がする玄人向きです。行ったことはありま せんが豊富温泉は世界でも珍しい石油分が含まれる温泉で、アトピーなどの皮膚 病に効果があるそうです。温泉といえば硫黄の匂いを思いがちですが、いろんな 種類があるんですね。非常事態宣言が明け、「新しい旅のスタイル」が再開され たので、家族でお安くふらっと温泉旅行はいかがですか?

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マ ス ク と 「表 情 認 知」

こらいずは子どもに関わる福祉施設と鷹栖町に認めていただいたことから、町内の小中学校や保育園の先生などと同様に、全員ワクチン接種を受けさせていただきました。変異株のことがありますので、もちろん安心はできませんが、自分が感染し子どもに移してしまうリスクが少しでも減少し、安心して利用してもらえるようになるかなと感謝しております。ワクチン接種後であっても「手洗い・マスク」といった個々の対策はもちろん、事業所内の衛生管理は引き続き徹底してまいります。

ところで、コロナのおかげで感染予防の必須アイテムとなってしまったマスク
マスクを忘れて外出しようものならとんでもない目で見られるようになってしまいました。 今はそれも当然だし仕方ないこと。でも、これが長く続くと今後、子どもの成長にどんな影響を与えるのだろうかと危惧もしています。

人と人とのコミュニケーションには、「ことば」を介した方法(言語コミュニケーション)と、「ことば」以外の身振りや表情や声のトーンなどによる方法(非言語コミュニケーション)があるというのはご存じでしょうか?
少し難しい話ですが、アメリカのメラビアンという心理学者の報告では、「話し手」が「聞き手」に与える印象の中で、話している言葉そのものが影響している部分は全体のわずか7%であり、その他93%はノンバーバル(非言語)の要素とのことでした(メラビアンの法則)。特に見た目や表情、視線などの視覚情報は50%を超えていて、コミュニケーションには「ことば」自体よりも視覚を主とした「非言語」が重要だということです。
また、視覚的に相手の表情や情動を感じ取る手段として、ある論文では「大人は相手の目から感じ取る」傾向があるのに対して、「子どもは目よりも口の動きから感じ取る」という報告があります。特に、自閉スペクトラム症(ASD)の子どもはその傾向が強く、その結果、目が合いにくく人の感情をくみ取ることが苦手とも言われています。

そこで、悩ましいのがマスク。
マスクは眼以外のほとんどの表情を隠してしまします。唇や口角の動きや歯などが見えないと赤ちゃんやASDの子どもは表情をつかみ取るのが難しいだろうと思います。これが長く続くとどうなるのか…
今後、「マスクと表情認知」に関する研究論文が出てくるかもしれません。
知らないだけで、すでに出ているのかな?

で、私がしているささやかなマスク抵抗運動。子どもがこらいずに来所して、手を洗っている時、5m以上離れた距離からマスクなしに「おはよ」と声を掛けます。子どもが帰る時も窓越しであればマスクを外して手を振るようにしています。子どもに大人の素顔を見せることをできるだけしてきたいと思っています。
その素顔を見た子どもが「かっこいい」と思うのか
「オッサンだな」と思うのかは… 

願わくば、少なくとも屋外ならマスクなしでOKという日常に、できるだけ早くなってほしいですね。

<書籍の紹介2>(今回の担当は谷口です)

「魔法の言葉がけ」 監修:平岩幹男

ついつい、「あ~‼〇〇ダメ~‼」「〇〇しなさいっ!!」子どもたちが小さかった頃、よく私が子ども達に言ってしまっていた言葉です…(笑)
日常生活で、一緒に何かをしながらの声掛けや関わり方をもっと知っていれば、ガミガミ言わず過ごせたのかな…
もう少し早く出会いたかった!!と思わせてくれた本をご紹介します。

遊びながら、一緒に何かしながら、親のちょっとした言葉かけで子どもの力が伸びると、成長を感じ嬉しいですよね。一息つきたい時や自分時間ができたときにぜひいかがでしょうか?
四コマ漫画もあり、とても読みやすいですよ。

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Aちゃんを「ギューッ」とした話

こらいずに来ていた「Aちゃん」。お父さんの異動で道外に行くことになりました。3月の利用最終日、いのりちゃんを「ギュッ」っと抱きしめてサヨナラしたかったのですが、コロナのこともあって、それはやめ「元気でね」と、いつものようにお別れしました。ところがその後、お母さんから「こらいずLINE」に「帰りの車の中で『先生とギューッてしたかった』としばらく泣いていた」と連絡が。そんな風に思っていのか… 「Aちゃんに会いに行こう。」そう思い、翌日お母さんに連絡して、彼女の家に向かいました。ご両親とAちゃんが玄関先で待っていてくれて、車を降りて近づくと『先生大好き』といって抱き着いてくれました。わずか数分の再会でしたが、とってもとても素敵な時間だったと思います。AちゃんはASDの特性が少なからずある子ですが、人を求めるいい所があるんだなと感じ、これからも、上手に育ってくれたらいいなと願っています。


保護者学習会を開催しました

本当はもっと早く保護者学習会または相談会を開きたかったのですが、相次ぐ「緊急事態宣言」「三密回避」など、なかなかみんなで集まる機運にありませんでした。今春でこらいずの利用が終了になるお子さんが多くいましたので、その保護者に限定して3月1日、10名ほどの保護者様に1時間程度お話しさせていただきました。

内容は「こらいず便り13号」にも掲載した「発達の特性(症状)があるからと言って、それがイコール障害ではない」といった話が中心です。講演後にお父さんお母さんとの意見交換の時間があまりとれなかったことが残念でしたが、それでも、保護者の皆さんにじっくりお話しできたことは、良かったなと思います。  

私は「究極の発達支援は保護者支援」と思っています。我々が一人のお子さんに直接関われる期間はわずかです。ですので、子どもへの支援はもちろんですが、子どもの育ちに悩む親に発達の道すじを伝え、前向きに子どもを育てていく手助けをする。そうすればその子どもはその子なりにうまく育っていく、そう信じています。

4月以降は、在籍されている保護者様にも学習会のご案内をいたします。蜜を避けるため、平日日中、夜間、土日… 何回かに分けて開催できればと考えています。保護者様それぞれのご都合を伺って日程を調整することにします。

 

保護者学習会 参加者の声


コロナ禍の中、勉強会を開催いただきありがとうございました。
周りの環境、先生や親の対応が大切な事がとてもよくわかりました。
が、いざとなるとなかなか実践できません。
こちらに余裕があり穏やかに対応をしている時は子供も落ち着いて過ごせていますが、こちらが余裕を失って対応を誤ると分かりやすく荒れます。
まさに、負のループ!断ち切ろうと。
小学生になっても定期的に勉強会を開催して頂けたら嬉しいです。   


高木先生のお話はポジティブに問題を考えたり実践しやすいことが多くとても参考になりました。
そして、楽しくお話を聞かせていただきました。
まだまだ心配なことはありますが、教えていただいたことを家庭でも心掛けながら実践してみようと思います。
希望を言えば…もう少し長く沢山話を聞きたかったです(2時間位は余裕で聞けます)。    


高木先生の話は2回ほど聞かせていただきましたが、私個人の感想としては、
「こんな子供がいて~・こうなって~・親御さんにこんなこと言われて~」と先生の体験談が資料の説明よりももっと聞きたいと思いました。
先生は「○○ちゃんがいて…」と具体的に名前も出すので、ますます親近感も出て聞き入るのですが、
軽く「○○ちゃんはこんな子どもで」と、説明があると良かったです。
3月でこらいずは終了になってしまいますが、4月以降も声をかけていたけたら勉強会に参加したいです。    


ありがとうございました

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『発達障害』という言葉は使いたくない

最近、こらいずに小さな図書コーナーができたことをご存じでしょうか?

専門書風の本もあれば、保護者の皆様に見てほしいなと思って新たに購入した本もあります。子育てのヒントになるような本を選んだつもりですので、機会があればご覧ください。簡単なレビューなんかも書いて紹介できたらと思っています。

 ところで、保護者の皆様に見ていただきたいこれらの本ですが、多くの書籍で表紙、タイトルに「発達障害」という表記があります。どういう種類の本なのかわかりやすくするためにそうしているのでしょうが、これでは親にとっては手にしずらいですよね。「自分の子が『発達障害』だと認めるようで…」「こんな本、家に置いといて子どもが見たらなんて思うだろう…」本当に察します。    

でも、これらの本には幼児期、学齢期、そして高校生から青年へとどう育てていけばいいのかといったヒントが多くあるのです。

 少し難しい話になりますが、“Developmental disorder””disorder”は「混乱・乱雑」という意味で、直訳すると「発達が混乱している(偏っている)」となるはずですが、なぜか日本語に訳したときに『発達障害』としたようです。この呼び方には以前から「症状(特性)があるだけで「障害」とするのは誤解を招くのではないか」という声もありましたが、長く使われていたためすっかり定着してしまいました。しかし5年ほど前、アメリカ精神医学会が診断基準を見直した際に(DSM-5)、日本精神神経学会がこれらの日本語訳を見直したのです!! 

「発達障害」        → 「神経発達症群」

「自閉症スペクトラム障害」 → 「自閉スペクトラム症」

「注意欠陥多動性障害」   → 「注意欠陥多動症」

「学習障害」        → 「限局性学習症」 

   

ざっくりいうと「どちらを使ってもいいですよ」ということのようです。
正しく知りたい方は、日本精神神経学会のホームページをご覧ください。

ただ、呼び方が変わっただけと思われるかもしれません。しかし、例えば集団でうまく振舞えない特性だけで「障害」と言うのではなく、「確かにそういう特性(症状)はあるよね。でも、この子なりにうまく適応できるように育てよう。そうできれば「障害」なんかじゃない」と考えています。

 この考え方の背景にあるのは、浜松医科大学児童精神科医の杉山登志郎教授が提唱する考えです。

<発達凸凹+不適応=発達障害>

「発達凸凹」というのは、子どもの個性、特性だったり症状と言えるかもしれません。でもこれだけで「発達障害」になるわけではないく、「発達凸凹」に「不適応」が加わるから「発達障害」になる。そういう考え方です。「発達凸凹」は子ども自身の特性ですが、「不適応」は実は大人が作る環境要因の影響が大きいのです。

「毎日叱られる」

「この子だけ特別扱いはできない」

「授業がさっぱりわかんないからもういいや」…。

こんな状況にならないように、保護者を含めた子どもに関わる大人が子どもの特性を理解しあい、共通認識の下でその子に関わり育てていく、それが大切だし大人の責任だと思っています。

これを実践するのは難しいことかもしれませんが、人口の少ない田舎町鷹栖町ならできるかも?
そう思って取り組んでいます。でも中々理想通りにはいかず。

お父さん、お母さん、保育園・幼稚園・学校の先生、役場職員の方とも連携して、一人の子どもを育てていく、そういうことができたらいいなぁと思ってます。

でも… 期待しすぎたらだめですよ。

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