究極の発達支援は保護者支援

専門支援事業を委託いただいている市町村発達支援センターなどに赴くと、現地の先生 方から「医療を受診するよう保護者に勧めてほしい」と依頼を受けることが多くあります。これはどういうことかというと、例えばある子について、単に「発達の遅れ」だけではなく、「対人面」や「行動面」の特徴から自閉スペクトラム症(ASD)や注意欠陥多動症(ADHD)などの神経発達症群の特性があるのではないかと、支援センターや保育園・幼稚園の先生方が感じている場合です。特に保護者がそのことを気づいていないか家庭では さほど困っていない場合、先生方が保護者に対してそのことを伝えると、その後の信頼関 係がぎくしゃくするのではと心配して切り出しにくい。そこで、医師にその子の特徴や診 断について判断してもらいたい、そのきっかけを私に作ってほしいということのようです。 何でも医療につなげればいいとは思っていませんが、このような役割は地域とは直接的 な関係の薄い者の方がいいのでしょうから、依頼された場合にはできるだけ保護者に伝え るようにしています。ただ、単に医療機関の受診を勧めただけでは保護者は困惑しあるいは不信に思うかもしれないので、そのお子さんについて長所、特徴、課題などできるだけ 丁寧に説明することを欠かさないよう心がけています。その際どうしてもASDやADHDなど 神経発達症について触れなければ核心的な理解は深まらないので、必要があれば神経発達 症に関する資料(紙芝居風にして用意しています)を見てもらいながら、こういった特徴ASDやADHDの特性と重なることを説明します。その際、下記のことについては特に注意して丁寧に説明するようにしています。
① 診断は医師がすることであって我々ができることではない
② 神経発達症の診断はインフルエンザのようにプラスorマイナスというものではない
③ 誰でも多かれ少なかれ神経発達症の特性は持っていて、生活や集団活動に影響するほ ど困っているかといった「程度」の問題(スペクトラム(連続体)という考え方)
④ 神経発達症の診断を受けたとしても、それがイコール「障害」ということではない 
⑤ 保護者を含めた関係する大人が共有してその子の特徴を理解し、できるだけ早くから 適切な関わり方をしていくことができれば、「障害」にすることなくその子らしく 育っていくことが期待できる
⑥ そのためにお医者さんに客観的に判断してもらうことは有用(睡眠リズムのこと、お薬のことなどが相談できることも含めて説明しています) 
親にしてみれば自分の子が神経発達症(発達障害)かもしれないと言われたらショックでしょうし受け入れがたいことです。しかし、保護者との面談の中で聞き取りをしていくと「落ち着きがない」「集団行動が難しい」「癇癪・乱暴な行動が多い」「こだわりが強い」など、一つひとつの困り感については「確かにそうなんです」となります。そこで 「お医者さんに診てもらって必要な医療と日常的な支援を助言してもらい、それを地域の先生方にも理解してもらって、いい子育て環境を作っていくことができれば、お子さんはもっと伸びていくと思いますよ」と伝えています。
場合によっては子どもに関わる時間よりも保護者と話している時間の方が長くなること もありますが、私は「究極の発達支援は保護者支援」と考えているのでこのことはとても大切なことです。ありがたいことに、このような面談をした親御さんの多くは「話が聞けて良かった」と前向きにとらえてくれているそうです。親にしてみたら、発達支援セン ター、児童相談所、医療機関などを利用するというのは気が重いことでしょう。その気持ちはよくわかります。だからこそ地域で身近に接している私たちは親御さんが子どものた めに前向きに判断し進めるよう支えていかなければいけませんね。

「発達障害の子どもの心と行動がわかる本」  田中康夫(監修) 東西社 より

いよいよ年末ですね。子どもたちにとっては冬休み、クリスマス、お正月と楽しみなこと がいっぱいでしょう。クリスマスイブにサンタさんからプレゼントをもらい、クリスマス にはお母さんからもプレゼントをもらうと張り切っている子もいるようです。サンタさん も大変ですねw  帰省や旅行に行かれるご家族もあるかと思います。道中気を付けつつ楽しくお過ごしください。

こらいずは、12/29~1/3までお休みになります。よいお年をお迎えください。

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