数カ月ほど前、ある女子高生がお母さんと一緒に相談に来られました。話を伺うと、幼少期から「忘れ物が多い」「物をなくす」「お友達との約束を忘れる」「部屋が散らかっている」「片付けられない」などの困ったことが多くあったそうです。ところが、明るく活発な性格でお友だちも多く、学力的にも優秀で、進学高校に入学し、先日、国立大学に合格できたとのこと。おめでたい話なのですが、そこで心配なのが「一人暮らし」。「うちの娘は大丈夫でしょうか?」という相談でした。
お話を聞いていて、このお子さんはADD(注意欠陥多動性症(ADHD)のうち「多動性」がないタイプ。女児に多いと言われている)の特性を持っているんだろうなと思いました。理解力の高いお子さんでしたので、本人に直接伝えることが有効じゃないかと思い、お母さんの了解を得て、本人に伝えることにしました。
「ADDという脳の病気があること」、「ADDの特徴」、「それがあなたにも重なること」、その上で、一人暮らしをしていく上で困らないためのアイディアをいくつか提案しました。その一つが「情報の視覚化(見える化)」。ADHDの人は注意が移りやすく、しかも忘れやすい。ワーキングメモリの弱さも指摘されています。そこで彼女に100円ショップで買ったホワイトボードを渡し、「大事な予定、約束はここに書きなさい。何でもかんでも書くと逆にわからなるから本当に大事なことだけにしなさい」等々伝えたのです。
その後、大学生になったその子から「ホワイトボード使ってますよ」と連絡してくれました。親がいなくても自分なりに工夫して、自分の力で頑張っているんだなと嬉しく思います。子どもの「生きる力」は素晴らしいです。
こらいずの子どもたちも、みんな何らかの困り感や課題を持っています。でも、それを「障害」と呼ぶのは好きではありません。「不適応をおこさなければ発達障害というべきではない」(杉山登志郎教授)という提言があります。何が問題なのか?その背景・原因は何か?どうしたらその子なりに育っていけるのか? こらいずでは、そういうことを考え、提案し、提供していきたいと思っています。
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